その正論、疑ってはいけないか？―「将来世代にツケを遺すな」という呪い

「将来世代にツケを遺してはいけない」

誰もが「その通りだ」と思う、正論中の正論です。しかし、この美しい言葉が語られるたびに、私たちは思考を停止させられていないでしょうか。

この言葉が使われるとき、決まって「今の痛み」を耐えることが求められます。そして、その痛みを最も長く、深く引き受けてきたのが、就職氷河期世代ではないでしょうか。

「将来世代のため」という、誰も反対できない大義名分。それは、「今の生活が苦しい」と声を上げる私たちに、「自己中心的だ」という罪の意識を植え付け、黙らせるための、強力な呪いになっていないでしょうか。

まるで、英雄である「まだ見ぬ未来の子供たち」のために、悪役である「今を生きる私たち」が犠牲になるべきだ、という物語です。

しかし、本当に道はそれしかないのでしょうか。痛みに耐え、縮小するパイを奪い合うことしかできないのか。経済を成長させ、パイそのものを大きくすることで、全ての世代が豊かになる道はないのか。

「将来世代にツケを遺すな」。この思考停止の呪いを解き、別の未来の可能性を問い直すこと。それこそが、今を生きる私たちにできる、未来への最大の責任なのかもしれません。

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